オフィスではさまざまな人が働き、作業内容も異なるにもかかわらず、全館一律のセントラル空調が使われるのが一般的です。
スーツにネクタイ着用の男性は暑く感じ、比較的薄着の女性は寒いと感じ、デスクワークで動きの少ない方は冷えると感じ、立ち仕事で作業を続けている方は暑いと感じます。
人は暑すぎても、寒すぎても作業効率が落ち、快適な労働環境とは言えず、生産性にも影響を与えます。
そこで、一人ひとりに合わせて調整ができる、理想的なワークプレイスを生み出す空調吹出口「TAACシリーズ」が誕生しました。
「TAACシリーズ」の概要や開発目的、特長についてご紹介します。
「TAACシリーズ」とは
「TAACシリーズ」のTAACとは、タスク・アンド・アンビエント一体型(空調)・吹出口を意味します。
従来型の天井吹出方式はワークプレイス全体(アンビエント)を均一の室温で空調する方式ですが、「TAACシリーズ」なら、一人ひとりのワークプレイス(タスク)の空調をコントロールできるようになるのです。
ファンの運転をONにすると、風向調整されたタスクノズル部よりビーム状の気流が吹出します。タスクノズル部は手動で全周45°まで調整できます。
ファンを停止すれば、外周部(アンビエント)部から天井面に沿った水平気流にて室内に広く吹き出す仕組みです。
モードによる制御もでき、通常運転モードでは、たとえば、帰社直後は強運転でタスクファン電圧がおよそ24V、居住域風速0.8m/s~1.0m/sに、弱運転ではタスクファン電圧がおよそ12V、居住域風速0.3m/s~0.5m/sにコントロールされます。
変動風を好む人向けのゆらぎモードは、タスクファン電圧が20V→12V→20Vと変化し、居住域風速0.9m/s→0.4m/s→0.9m/sとどんどん切り替わるモードです。
空研工業の「TAACシリーズ」は現在2シリーズが用意されています。
TAAC2は1台で2人に対応、グリッド天井及び在来天井に対応でき、ワークプレイスのゾーンごとにフレキシブルな空調ができる、省コストタイプです。
TAAC4は1台で4人に対応、グリッド天井及び在来天井に対応でき、ワークプレイスのどの場所でも全体+パーソナルな快適空調が実現されます。
「TAACシリーズ」の目的
オフィス空調はビル全体のセントラル空調やオフィスフロアごとに室内温度が均一になるように設計され、一律温度が基本です。
そのため、かつては夏の冷房時は冷えすぎると感じる人がいることや冬の暖房時には暑すぎると感じる人がいました。
近年では地球温暖化防止のために省エネが叫ばれ、オフィスの空調は環境省が推進しているクールビズ設定として室温28℃が設定されています。
気温40℃に迫るなど猛暑が酷くなる中、冷え性が気になる方でさえ、暑さを感じる温度設定になっています。
オフィス内で作業をする方や営業などで暑い場所から戻ってきた方などにとっては、かなり過酷な温度設定と言えるでしょう。
とはいえ、その人だけのために冷房温度を下げることや一時的に冷やすことは現実的ではありません。
それを叶えてくれるのが、新たに開発された空研工業の「TAACシリーズ」なのです。
暑がり、寒がりといった個人の体質や感じ方をはじめ、デスクワークや動きながらの作業など仕事のスタイル、暑い外から戻ってきたばかり、寒い日に出社したばかりの状況や風邪気味、お腹を壊したなど体調によって、その時々で調節が可能です。
個人の快適性・知的生産性の向上と省エネに役立ち、従業員の労働環境の向上や健康への配慮といった働き方改革など、現代の職場におけるさまざまなニーズに応えてくれます。
オフィスの温度や空気の質を改善することで、知的生産性が向上するとの研究成果も出されており「TAACシリーズ」の導入で知的生産性を高めることができれば、トータルで見てランニングコストも抑えることが可能です。
「TAACシリーズ」の特長
「TAACシリーズ」の主な特長をご紹介します。
1.一人ひとりのあらゆる状況にマッチ
「TAACシリーズ」は一人ひとりの状況に合わせて気流を調整できる、誰もが我慢しないで済む、快適なオフィス空間を実現できます。
オフィスのレイアウトに合わせてパーソナル吹出口を設置し、一人ひとりの最適な状況を作り出すことができるのです。
個別に強運転、弱運転などを選択することができます。
出勤時や昼休みに外から帰ってきたとき、営業を終えて戻ってきたときなど、寒い外や暑い外からオフィスへ入ったときは、タスク強運転でスピーディーに快適な環境を得ることができます。
全体の一律空調から「TAACシリーズ」による個別空調への切り替えは、暑がり、寒がりといった個々の体質だけでなく、その時々の状況や体調などによっても変えられるのが大きな特長です。
体調が優れないときは風を止めたり、弱めたりでき、眠気に襲われたときはパワフル運転で知的生産性を上げることもできます。
2.コスト面のメリット
企業において大きなコストを占める人件費、オフィス運用における光熱費で大きな割合をしめる空調費用、この2つを同時に軽減できるのが「TAACシリーズ」です。
「TAACシリーズ」の導入で省エネにより空調コストが低減できるだけでなく、知的生産性を高めることで結果として人件費を抑えることにもつながります。
「TAACシリーズ」の採用は、今の時代に積極的に行いたい設備投資です。
気になる設置コストも、従来のシステムと大きく変わりません。
ファン付きで風量をコントロールできるため、変風量のVAV方式の個数を減らす事もでき、パッケージにも対応できます。
オフィスレイアウトに合わせて、執務者が集中するエリアでは吹出風量を増やし、窓際など個室が設けられるエリアでは風量を減らすといった対応を取ることで、設置コストも減らせます。
3.オフィスに合わせた提案
空研工業では、オフィスレイアウトやワークスタイルの実態に合わせたパーソナル吹出口を提案しているので、設置時のイニシャルコストも運用時のランニングコストの軽減も可能です。
たとえば、よくあるオフィスのレイアウトで執務ゾーンを中心にTAAC4を採用する場合、3ヶ所のゾーンに分けて空調吹出風量をコントロールするのがおすすめです。
デスクワークスペースなどのスタッフが集中するゾーンは、吹出風量を集中して増やします。
これに対して、窓際ゾーンは企業によって使い方がさまざまです。
個室や作業スペース、打ち合わせスペースなど幅広い利用の仕方があり、窓からの熱遮蔽を目的にペリメーター空調を設置することも少なくありません。
設置コストをダウンさせるために、インテリア空調吹出口を減らすのがおすすめです。
通路や棚が置かれるゾーンは、一般的には吹出風量は少なめで十分です。
また、会議室・サーバー室などを設けるケースもあり、さらに将来の個室対応への配慮という点でも天井内のダクトは少なめにしておきたいゾーンです。
このように、執務ゾーンを中心にTAAC4を採用する場合、執務ゾーンのモジュール中心に空調風量を設計します。
全体的に見ると、TAAC4を使用することで吹出口を集約化することで従来より半減でき、かつ、ダクト系統の削減ができて設置コストが抑えられ、パーソナル性を高めることが可能です。
結果として、50㎡に1台としているVAVを150㎡に1台へと削減でき、従来方式に近いコスト(105~110%)で導入ができるのもメリットです。
4.芝浦工業大学秋元研究室と共同研究
芝浦工業大学との共同研究によって、優れた効果が実証されている点も信頼に値します。
芝浦工業大学秋元研究室との共同研究で、実務環境下における環境・生理量測定、省エネ性評価、アンケート調査、サーマルマネキンを用いた気流曝露実験や呼吸域の換気効率検証などを実施するとともに、実際に空調技研工業のオフィスに試験導入を行い、空調のプロであるスタッフへの実証試験も行われました。
一人ひとりが求めている温熱環境の実現や健康・知的生産性の向上への寄与が期待できることが実証されています。
中でも気になる省エネ性については、以下のような検証結果が出ました。
省エネ性の実測検証
夏期オフィス実測データを集めた検証の結果は以下の通りです。
従来空調を26℃設定基準で空調系統全体の消費電力量を比べたところ、TAAC導入時では27℃設定にすることで19.5%の削減、28℃設定では26.9%の削減ができ、タスクファンの稼働による消費電力量は2%程度の上昇にとどまりました。
わずか2%の消費電力の追加で、一人ひとりに快適な空間を提供でき、知的生産性の向上や健康増進に役立てば、トータルで見ればコストダウンにつながります。
冬期オフィス実測検証では、暖房立ち上げ時にタスクファンを稼働させることで、気流が天井面付近に溜まりにくくなり、暖気を執務者がいるエリアへと効率良く循環させることができました。
暖かい空気は上へとのぼってしまう性質があるため、タスクファンの活用は暖房立ち上げ時間や上下温度差の緩和にも有効です。
5.パソコンやスマホでコントロール
利用者が専用リモコンを使って、操作をしたいファン付き吹出口を自分に合わせて適宜コントロール可能です。
赤外線学習リモコン(他社品)を使えば、AIスピーカーなどとの連携も可能。
TAACをスマートフォン、音声でコントロールし、ファンの強・弱・ゆらぎ・停止を操作できるので「一人ひとりの、その時その時の快適」を実現しやすくなります。
まとめ
空研工業の「TAACシリーズ」(タスク・アンド・アンビエント一体型空調吹出口)は、1台で2人に対応するTAAC2と1台で4人に対応できるTAAC4があります。
オフィスレイアウトや作業環境に合わせて設置することで、一人ひとりの体質や体感温度、その時々のワークスタイルや状況に応じて、ファンの強弱や停止、ゆらぎ運転ができ、風量コントロールを通じて快適な冷暖房環境が手に入るのが特徴です。
働く環境を快適に保ち、知的生産性の向上や健康対策にも役立ちます。