ビルや商業施設、医療機関などの空調設備に欠かせない「制気口」。
しかし、実際に選定しようとすると、種類が多くてどれを選べばいいのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
本記事では、制気口の基本的な役割から主要なタイプ別の特徴、設置場所に応じた選定方法までわかりやすく解説します。
制気口とは?役割について解説
制気口とは、空調設備において空気を吹き出す「吹出口」と、使用済みの空気を取り込む「吸込口」の総称です。
高気密な商業ビルや医療施設では、窓を開けて換気する機会はほとんどありません。
そのため、機械換気によって室内空気を循環・入れ替える必要があります。
このとき活躍するのが「制気口」です。
外気を取り込む吸込口は、室内と外壁に設置します。
外壁に設置する吸込口は、丸型と角型のガラリを使用します。外に吸込口を設置する時、雨が吸込口から中に入らないようにしましょう。
また、室内に設置する吸込口は、吹出口から離れた場所に設置します。
吸込口と吹出口の2つを離して設置することで、空気の流れができる仕組みです。吸込口から室内の空気を吸い込み、建物外や空調機に戻します。
吸込口にフィルターを設置することによって、空気と一緒に吸い込んだほこりなどを取る働きもあります。
室内に設置する場合、ユニバーサル型の吹出口と兼用して、使用することも可能です。
代表的な制気口の種類と特徴
ここからは、主要な制気口の種類を10タイプに分けてご紹介します。
1.(アネモ型)シーリングディフューザー
アネモスタット社が開発した天井取付用吹出口です。
丸型、角型、多層コーン、パン型などの形状に加え、サイズも小さなものから大きいものまでありますので、天井用吹出口としては最も多く使用されています。
2.床置き型吹出口
床置き型吹出口は、フロアの床に埋め込むタイプの吹出口です。
特徴は、床から空気が吹き出すことです。冷房の冷たい風も下から吹き出すため、直接気流が当たると足元が冷えやすくなります。
また、ダクト工事は不要のため、工事が比較的簡単です。
床置き型吹出口についての詳細記事はこちら。
3.オート型温度センサー付吹出口
温度センサーが搭載された制気口です。
その温度センサーの動きにより風の向きを変更したり、風の到達点を変更したりします。
さらに、電気を使わないため、電気代はかかりません。オート型温度センサー付吹出口は、操作が難しい高い天井に使用されます。
4.結露防止型吹出口
吹出口は『アルミ製』がほとんどです。アルミ製品は、結露をしやすいという特徴があります。
結露防止型吹出口は、樹脂製のカバーやヒーターを吹出口に取り付け結露対策をします。
結露が付くと、ほこりがついたりカビの原因になるため、対策することは大切です。ただし、結露をゼロにすることはほぼ不可能です。
結露防止用のカバーについての記事はこちら。
5.システム・グリッド天井用吹出口
システム・グリッド天井用吹出口は、システム天井用とグリッド天井用の2タイプの吹出口です。
システム天井用は、天井部材であるTバーと平行に取り付けます。
また、グリッド天井は格子状に取り付けます。
窓からの熱を防止するために、窓に向けて風を吹き出すタイプもあります。
6.マルチ型吹出口
マルチ型吹出口の場合、元々ある天井に取り付けることが可能です。
コーンタイプとパンタイプに分かれます。吹出方向を1~4方向まで指定できます。
7.ライン型吹出口
線状の吹出口を、ライン型吹出口と呼びます。
羽根が固定されているタイプと、動くタイプがあります。
羽根によって、風向きの調節が可能です。例えば、工場などのエアカーテンに、ライン型吹出口が用いられています。
8.ノズル型吹出口
ノズル型吹出口の特徴は、風の到達距離が長いことです。
そのため、ノズル型はコンサートホールのような広い空間や、吹き抜けなどで使用されます。
9.ユニバーサルグリル
ユニバーサルグリルは角型で、流線型の羽根が動きます。
羽根が動くことで、風向きを変えます。
10.スリット型吸込口
見た目は、ユニバーサルデザインと似ています。
違いは『羽根は長方形で固定されている』という点です。
制気口の選び方(選定基準)
制気口には、それぞれの形状や性能などの違いにより、さまざまな種類があります。
風が届く距離、風向きの制御性、結露対策、見た目のデザイン性など、設置環境に合った選定が不可欠です。
ここでは、失敗しないための制気口の選び方をご紹介するため、参考にしてください。
選び方1.設置場所
制気口を選ぶうえで重要なのは「どのような場所に取り付けるか」という点です。
施設の種類や利用者の特性、天井の高さ、空間の広さなどによって、最適なタイプは大きく異なります。
制気口を設置する場所は、病院やホール、商業施設などさまざまです。
たとえば、以下のようなケースでは、それぞれ異なる機能を持つ制気口を選ぶようにしましょう。
- 病院や高齢者施設:風が人に直接当たると、寒さや不快感の原因になるため、風が柔らかく拡散されるアネモ型や風向き調整可能なユニバーサルグリルなど
- 学校・体育館・ホール:天井が高く広さもある空間では、気流が届きにくくなるため、到達距離が長いノズル型や、方向指定ができるマルチ型など
- オフィス・商業施設:デザイン性や空間の統一感も求められるため、天井に溶け込むアネモ型、システム天井・グリッド天井対応のライン型など
- 厨房や機械室など高温・多湿環境:結露や汚れの問題を防ぐために、結露防止型や、清掃性の高い材質
価格やデザインだけで決めてしまうと、風の流れが不自然になったり、結露やカビの発生などトラブルにつながる恐れもありますので、注意しましょう。
選び方2.プロに相談しよう
制気口を選ぶ際には、風量や風向きの計算をすると、さらに空間に合った制気口を選ぶことが可能です。
しかし、計算をするには知識が必要です。そこで、設置したい場所に合った制気口を選ぶ方法として、プロに相談しましょう。
プロであれば、設置する場所や設置する制気口のタイプなどを相談できます。
しっかりと希望を伝えて、快適な空間づくりをしましょう。
おすすめの制気口
制気口は複数のメーカーから多様な製品が販売されており、同じシリーズでもサイズや機能によって価格が異なります。
風向調整機能付きや結露対策済の製品など、用途に応じて最適なものを選びましょう。
導入時はコストだけでなく、メンテナンスのしやすさや将来的な交換性も検討材料にすると安心です。
ここでは、おすすめの制気口をご紹介しますので、参考にしてください。
1.ユニバーサルグリル型 (H型)(VH型)(VS型)(VHS型) 空研工業
シンプルなデザインの吹出口専用のユニバーサルグリル。
H型とVH型、VS型、VHS型があります。羽根は縦と横で構成されています。
角度調整バーで、羽根の調整が可能です。
角度を調整することで、風の向きと到達距離も変更できます。
シャッター付きや羽根の組み合わせで、さまざまなタイプに変更可能です。
サイズも豊富であるため、オフィスなどさまざまな場所で使用できます。
2.スリット型吸込口(SL型) 空研工業
吸込口の形としてメジャーなスリット型です。
さまざまな場所で使用できるように、縦羽根(V)型と横羽根型(H)、シャッター付きと種類が豊富です。
点検口付きはV型とH型があります。また、簡易防火シャッター付きもあるため、必要な場合は相談しましょう。
ただし、防火区画貫通部には使用できません。
3.無結露・汚染防止型アネモ 多層コーン型可動式 協立エアテック
ここまで紹介してきた制気口とは違い、大型の制気口です。
4パターンでサイズ展開をしているため、さまざまな場所に設置することが可能です。
特徴は、特殊な気流を作ることです。
特殊な気流を作ることで、発生してしまう結露を発生させない仕組みです。
その他には、風向きを変えることができたり、音が静かです。
おすすめの設置場所は、厨房や地下鉄の駅、出入り口など空気や天井が汚れやすい場所です。
また、汚染防止機構が付いているため、空気が汚れやすい場所に設置可能です。
設置方法は、大型の制気口ですが、配線は不要です。
さらに、保温工事が必要ありません。そのため、短期間の工事で取り付けが完了します。
まとめ
病院やビルなどの建物は、住宅のように窓を開けることができません。
そのような時に必要になる物が、制気口です。
制気口があることで、室内の空気を入れ替えることができます。
制気口には、吹出口と吸込口があります。吹出口から風が出て、吸込口から空気を吸い込む仕組みです。
製品によって素材や機能、サイズなどが異なります。設置を検討している場合は、設置場所の広さや、空間の使用用途などを確認しましょう。
場所の環境によって、制気口を決めることが大切です。また、自分で決めることが難しい場合は、プロに相談することも方法です。